名古屋大学 理学研究科

物性理論研究室 量子輸送理論グループ(S研 Stグループ)

スピントロニクス

スピントロニクスとは、電子の持つ内部自由度であるスピンに着目し、新たな物理現象を開拓していく分野です。スピントロニクスでは、スピン角運動量の流れであるスピン流を用いた研究が行われており、私たちの研究室でも、スピン流が織りなす様々な物理現象を探索しています。

スピントロニクスの最先端

スピントロニクスにおける近年の課題として、スピン流とその他の物理量との間の相互変換や、電子以外の粒子も用いたスピン輸送が挙げられます。これらの課題は、スピン流を用いた情報伝達を考える際に、より省エネルギーで効率的なスピン流の生成、伝搬、検知をする上で重要となります。 スピン流を用いた情報伝達を考える前に、これまで先端技術を支えてきたエレクトロニクスの場合を考えてみましょう。エレクトロニクスでは、電流の生成、伝搬、検知の効率化が重要な課題でした。電流を生み出す方法としては、熱エネルギーを利用した火力発電や、水流を使ってタービンを回し、回転を電流へ変換する水力発電があります。導線は、電流を伝搬させるのに用います。導線の中を電流が流れ、各デバイスにおいて電流を「検知」することで、私たちは情報を得ることができます。
では、スピン流の場合に置き換えて考えて見ましょう。スピン流は熱や電気、力学的な回転や振動から生成することができます。スピン流は、伝導電子のスピンがある方向に揃った状態で流れる、スピン偏極した電流によって伝搬することができます。また、電流はゼロでもスピン流が流れる、純スピン流によっても伝搬することができます。この場合、伝導電子だけでなく、フォノン(格子振動を表す準粒子)やマグノン(低エネルギー磁気励起を表す準粒子)によってもスピン流が伝搬することができ、これらを用いることでより長距離なスピン流の伝搬や、ジュール熱の発生しない情報の伝搬が可能であることが期待されます。伝搬してきたスピン流は、例えば再び電流に変換することで検知することができます。このようにして、スピン流と他の物理量の相互変換や、電子以外の粒子も用いたスピン輸送を組み合わせることで、より効率的で多様性のある方法で情報伝達が可能になります。

私たちの研究

私たちの研究室では、スピントロニクスの諸問題を、微視的な理論に基づ計算を行うことで解決に取り組んでいます。

  1. 電子-マグノン結合系におけるスピン輸送
  2. トポロジカル絶縁体表面上の電子-マグノン輸送
  3. スピン軌道相互作用に起因するスピンと力学的回転の結合
  4. スピン-フォノン結合によるスピン緩和の微視的理論
  5. 磁化構造に起因する異常ホール効果とスピンホール効果
  6. 電流による磁壁移動など

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