名古屋大学 理学研究科

物性理論研究室 量子輸送理論グループ(S研 Stグループ)

マグノンに起因する輸送現象の探索

マグノニクスとマグノンの特徴

私たちはこれまでスピントロニクス特にマグノンによって引き起こされる物理現象に着目した分野(マグノニクスで研究を行ってきました。スピントロニクスは電子の持つ内部自由度であるスピンを利用して新たな物理現象を開拓していく分野ですが、そこでは角運動量の流れであるスピン流が重要な役割を果たしています。スピン流としては伝導電子によるスピン流がよく知られていますが、私たちは低エネルギー磁気励起を記述するスピン波(図1)やそれを量子化したマグノンスピン流を運ぶ性質(マグノンスピン流)を利用した研究に着目しました。マグノンを利用するメリットとしては、1. 長距離伝搬が可能である、2. 絶縁体中でも伝搬できる、3. 温度勾配によってマグノンの流れ(マグノン流)を作ることができる、と言った点が挙げられます。マグノンのこれらの特徴から、ジュール熱の発生しない省エネルギーデバイスへの応用が期待されています。

図1:スピン波のイメージ図

マグノンのスピントルク

スピントルクとは、磁壁に代表されるような磁化構造にスピン流を流した場合に、磁化を構成している局在スピンに働くトルクのことです。スピン軌道相互作用がない場合のスピントルクとしては、スピン角運動量の保存に由来するスピン移行ファートルク (spin-transfer torque, STT) と、スピン緩和(スピンの散逸)による補正項であるβ項が存在することが知られています。(スピン偏極した)電流によるスピントルクについては以前から知られているが、マグノンもスピン流を運ぶことから、マグノンによるスピントルクが存在すると考えられます。

電子-マグノン系のスピン輸送

近年、マグノンと他の自由度(粒子)との結合、特に伝導電子との結合がある場合の輸送現象についての研究が行われています。強磁性金属に温度勾配を印加する場合を考えると、温度勾配によって直接的に電流やマグノン流が誘起されますが、電子-マグノン結合によって、電子がマグノンに引きずられる効果(マグノン・ドラッグの効果)による電流や、逆にマグノンが電子に引きずられる効果(電子ドラッグの効果)によるマグノン流が生じる過程も考えられます(図 2)。

図2:ドラッグ過程のイメージ図。黄色い球は伝導電子を表している。
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